窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「橋下劇場」(中央公論新社刊、読売新聞大阪本社社会部著)

 折しも、自民党、民主党総裁選真っ盛りの平成24年9月。年内総選挙の様相を呈しており両党とも来るべきその時に備えた選挙の顔選びでもある。敗戦濃厚の民主党は現総裁でもある野田佳彦氏が優勢、自民党は爺殺しの異名をとる石原伸晃氏、安倍晋三氏、石破茂氏の三つ巴といった戦況である。しかし、そんな両党総選挙もどこ吹く風の現大阪市長元大阪府知事率いる「日本維新の会」党首橋下徹

 大阪市職員幹部には昼夜を問わずメールで問題共有、指示、そして考えを求める。  また、ソーシャルネットワークを巧みに活用し、過激すぎる発言で物議を醸す時も多々見受けられる。オープンな場で政策に関しての問題提議やメディアの論調を攻撃し反応を窺う手法はかつての小泉純一郎首相を思い出さずにはおれない。小泉首相は郵政民営化問題で反対派を抵抗勢力とし、定例のぶら下がり会見においても徹底的に攻撃した様子は何度もメディアで報じられた。生きるか死ぬかの戦い。そして、国民の信を問うとして解散総選挙に打って出た。かたや橋下徹党首も統治機構の変革、つまりグレートリセットを理念として国政を担える日本維新の会を立ち上げる。生きるか死ぬかの戦い。既得権に胡座をかくものたちとの壮絶な戦い。

 本書は政治家橋下徹大阪市長誕生から国政進出前夜までのドキュメントである。また、本書から特段の知見は得られないが、大阪府知事選を決意させた元経済企画庁長官の堺屋太一氏をはじめ、関西経済界の橋下徹応援団の存在、そして、政治任用した大阪府市統合本部の特別顧問、参与の裏話はなかなか興味深いものではあった。

 遅くとも24年度内には発足するであろう新政権、そして新たな総理大臣。大阪市政を半ばに衆議院選挙への不出馬しないと巷間噂されているがそんな、不出馬ストーリーは彼の頭には無いのかもしれない。