窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論社刊、大村大次郎著)

 元国税調査官の著作。
 本書は脱税の指南書では無い。手順を踏み、「社会通念上」(分かりやすく云えば常識的に見て)という概念を踏み外してなければ大凡の領収書は経費処理出来ると云うもの。
 税務の専門家や職業経理マンの同種の手引書は数多いが用語等が難解であったり、税務知識が必要であったりとかでなかなか必要に迫られている実用書としては満足出来ない著書が多い。
 大企業、中小企業にかかわらず、利益調整弁としての経費処理は会社運営にとっては最も大切な経営課題の一つでもある。恒常的な福利厚生費用の有効活用に多数頁で説いているのも他書には無い特徴である。給料が30万の社員(10%課税で3万円が税金)が生活費として15万を充当している場合、会社が15万を福利厚生費という経費処理をすれば社員の税金は1万5千円。実質的に社員は30万の給料を貰っている事と等しい。当然、会社が負担すべき社員の社会保障費も15万に対してのものだけで済ませる事が出来る。社員、会社ともにメリットが大きいのである。
 また、本題である領収書の処理に関してはキャバクラ代であれ、薄型テレビであれ、家族旅行であれ、会社の業務に関連しているかどうかである。取引先接待、情報収集、研修旅行と云う大義名分とエビデンスが有れば経費処理出来るのである。しかし、領収金額、日付の偽造は御法度。発覚すれば過年度分まで調査され追徴課税され、悪質ならば重加算税を課せられるのは覚えておかなければならない。