窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「一生食べられる働き方」(PHP新書刊、村上憲郎著)

 食う為に働き、そして世界をイメージする。此れが著者の働き方。
 著者は元グーグル米国本社副社長兼日本法人社長の最新刊。
京都大学の学生時代には世界革命を目指し左翼活動家でもあったようだが、華麗なる職務経歴を積み重ねる中でも、常に「転向」してしまったという事が魚の小骨のように喉に引っかかっていたようである。
著者のような団塊の世代のど真ん中の世代にとっての働く事の意味は食べる事に他ならない時代である。卒業後は日立製作所の子会社日立電子時代にはコンピュータ技術のイロハ、米国DECの日本法人へ転社後は営業、マーケティングと新たな分野で能力をいかんなく発揮する。 英語も使えるようになった著者は米国本社へ異動する事となるが、将来のキャリアを考えて数年後退社を決意する事なる。そして、数社の企業で代表取締役を経てグーグルへヘッドハンティングされるのである。著者は謙遜して此れを「ツキの村上」と呼んでいる。
 本書は著者自身の職務経歴書のダイジェスト版的要素が濃いが、幾つかのメッセージも含まれているのだが、日本の教育制度への苦言と提言の部分が素晴らしい。飛び級の出来ない日本は無駄な時間を学生に強いてしまい結果、若い才能の可能性を潰している。日本のエリートが最終目的としている東京大学入学という事が最大の問題である。ビジネス界を席巻している中国人エリートは中国共産党からハーバードやMITに送り込まれ語学力は勿論、MBAも取得しているのである。ビジネスがグローバル化している現在においては世界共通語である英語を話せることが前提としてビジネス界は回っていると認識しなければならない。