窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「日本カジノ戦略」(新潮社刊、中條辰哉著)

 嘆かわし事ですが、カジノ関連書籍が如何に少ない事か。わが日本は地方自治体を中心に誘致構想こそあれど、法案成立に至っていない。その事と無関係では無いだろう。

 本書は2007年刊行と云う事もあり昨今のマカオの隆盛は織り込まれていない。ネバダ州立大学でカジノ経営学を専攻した中條辰哉氏によるもので、カジノの仕組み、カジノの魅力に引き込まれる人間の心理、そしてラスベガスのカジノ産業の変遷が過不足無く纏められている。

 カジノエンターテイメントは常にカジノを中心としてミュージカル、コンサート、遊園地などを配している。ハイローラー(1回の滞在で高額のプレイをする人、whale=鯨とも呼ばれる)が束の間のクールダウンで癒されたり、ファミリー層のテーマパーク的な利用にも配慮されている。それらは全てカジノ収益を最大化させる事、リピーター喚起の緻密なシステム構築の結果である。

 また、反社会的勢力との癒着、マネーロンダリングの温床、はたまたカジノ自身の遠隔操作等の不正があるのではと巷間云われているが、1930年に20年間禁止されていたギャンブルが合法化され、カジノオーナー、デベロッパー、ゲーム機メーカー、エンターテイメント業界により徹底的にそれらの不正は排斥された。

 最後に日本でカジノ合法化がなされた際の懸念が提示されている。カジノ運営における税金の問題(税率が高いとはプレイヤー自身が搾取されているとして忌避される)、外国人プレイヤーとの語学コミュニケーション問題(外国人雇用)、交通利便性(空港整備、道路整備)などの諸問題がクリアされなければ日本カジノは栄えないとしている。本書では言及されていないが、世界最大規模のマカオやシンガポール以上の魅力が無ければ外国人誘致は難しいだろう。

 日本維新の会は2013年の通常国会でカジノ法案提出を検討している様です。そして、大阪府もカジノ誘致にむけた調査費も予算計上する様です。日本ならではのカジノエンターテインメントの魅力を如何に創造するか官民一体となった取り組みが急務である。