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窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「安倍官邸の正体」(田崎史郎著、講談社現代新書刊)

 2014年年末の衆議院解散後直後に執筆されたと思われる本書は数多ある安倍総理書籍の中でも良書と言えるだろう。政治記者の本分は国家権力の構造の分析と解明だと言い切る著者は稀有な存在だろう。政策に無頓着で政局の報道に終始する記者が多い事に辟易する。テレビを中心に政局がらみの番組でコメンテイターとしても良く露出している著者も同類に考えていた。

 第一次安倍内閣の蹉跌と復権への渇望。祖父の岸信介元総理、総理候補と言われて急逝した安倍晋太郎を父に持つ安倍晋三は紛れもない政治エリートである。小泉純一郎内閣では官房副長官を歴任し、祭り上げられる格好で総理大臣に就任する。そこでは官房長官、副長官を中心としたライン重視から首相補佐官を中心としたスタッフ重視へと変更された。そこでは当然、塩崎官房長官にスタッフを纏め上げる能力は無く、さしたる成果を残すこともなく政権は瓦解していくこととなる。そして、体調悪化も進行し総理という職責を果たすことは出来なくなり退陣となるのである。総理復権への執念が日に日に増し、そして、自民党総裁選を勝ち抜く事となる。日経平均株価が急騰した事と、円高が是正されたこと以外に対した成果が上がらなかったアベノミクス2020年東京オリンピック招致が成功、集団的自衛権閣議決定、そして2014年年末の衆議院解散へと続く。

 上記の様な日程で第二次安倍内閣は経過中であるが、本書の見所は政治日程を追うことでは勿論ない。第一次内閣と第二次の対比、例えば官僚の支配の仕方、官邸に於ける会議体の変容など枚挙に暇がない。総理の「右傾化」に性質や、一次政権時のフレーズ「戦後レジームからの脱却」発言回避戦略の説明は納得感十分である。また、二次政権最大の参謀かつ女房役である官房長官菅義偉の出来る男ぶりは特に楽しい。