窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「マネー・ボール」(武田ランダムハウスジャパン刊、マイケル・ルイス著)

映画公開もあり既読の方が多いと思われます。
メジャーリーグ球団といえば、ポストシーズンやワールドシリーズに進む為の選手獲得においてはお金に糸目を付けない。またはその様な球団こそがメジャーリーグ球団のオーナー足りえるイメージを持っているのは日本人は私だけでは無いでしょう。しかし、ヤンキース、メッツ、レッドソックスなどを覗けばドラフト、トレードで有力選手を獲得するには多額の資金が必要となります。当然、資金力で勝る上記金満球団は彼ら独自の評価指標に合格する有力選手を大枚をはたいて獲得出来てしまいます。
そして、戦績も金満球団優勢で有ればマイケル・ルイス氏は興味も示さず本著も存在しなかった事でしょう。
 本著はルイス氏が決して裕福な球団ではないアスレチックスの戦績に注目し、メジャーリーグと云う華やかな球場の裏方であるゼネラルマネージャー(実在の人物であるビリー・ビーン氏)に辿り着き、彼の特異な選手分析(セイバーメトリクス、ビル・ジェイムス氏によって提唱された)・獲得手法を目の当たりにします。球界から不当な評価をされている原石あるいは峠を超えたと云われるかつての名選手の再生工場よろしく再び輝かせる手腕のエピソードの数々はメジャーリーグに疎い筆者も十分に堪能する事が出来たのです。
 日本のプロ野球では広岡達郎氏や根本陸男氏など数名を除いてゼネラルマネージャーと云う職業を想起させる様な人材が不足しているように思われるのですが、彼らがビリー氏同様の手法を駆使していたのかどうかは知り得ません。しかし、日本ではまだまだ野手では本塁打数、打率を比較するだけにとどまり出塁率が重要な要素となっているとは思えません。メジャーリーグスタンフォード大学ハーバード大学出身のゼネラルマネージャーの様に東京大学京都大学出身のゼネラルマネージャーが現れても良い時代の気がします。もしかして、2012年プロ野球界には現れているのかもしれません。