窓際の景色

書評、釣行記。

書評

【書評】「フラッシュ・ボーイズ」(マイケル・ルイス著、文藝春秋刊)

曲がりなりにも株式取引を齧っている者としてはアメリカの株式市場の昨今の変貌ぶりに驚愕させられる事となった。 1回の人為的なケアレスミス以外は全戦全勝の超高速取引業者という者が居るようだ。通信ネットワークの高速化を背景に、証券会社(アメリカで…

【書評】「社長失格」(板倉雄一郎著、日経BP社刊)

板倉雄一郎というアントレプレナーもハイパーネット社というインターネット企業がかつてあったことを今や誰も口にしないし、存在していた事さえ忘れ去られている。私も本書を手にするまで存在さえ知らなかった。 起業家精神に富み、次々と新たな発想を具現化…

【書評】「元外務省主任分析官•佐田勇の告白 小説•北方領土交渉」(佐藤優著、徳間書店刊)

止まってしまった北方領土交渉の再開を切望する佐藤優氏の渾身の力作。敢えて書き下ろしではなく月刊誌の連載を書籍化したものである。外務官僚などロシア外交当事者達に段階的にシグナルを送る為の連載だったようだ。 ノンキャリアながら旧ソ連、ロシアに…

【書評】「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(増田俊也著、新潮社刊)

格闘技、とりわけ柔道に関しては全くの無知である。戦後で言えば井上康生、山下泰裕、小川直也、吉田秀彦、ウィリアム・ルスカ、アントン・ヘーシンク、少し古いところでは坂口征二くらいのものである。戦前ともなれば言わずもがなである。この長編柔道読み…

【書評】「天地明察」(冲方丁著、角川書店刊)

江戸時代初期において改暦を成し遂げた渋川春海の生涯を描いた感動巨編。 主人公の春海は江戸幕府の将軍を前にしての御前試合をはじめ、幕府の要職に指南する碁打ちを公務としている。その傍ら、算術への好奇心、探究心も半端が無い。算術の師でありライバル…

【書評】「ロスジェネの逆襲」(池井戸潤著、ダイヤモンド社刊)

フィクションを読むのはいつ以来か。先日の最終回で平成の民放ドラマ史上最高世帯視聴率を記録したTBS系列「半沢直樹」の余韻が覚めやらない。ドラマ化の条件として半沢直樹氏の頭取就任までのシナリオ提示をプロデューサーに求められたとか。 本書は営業第…

【書評】「成長戦略のまやかし」(小幡績著、PHP新書刊)

アベノミクスを含めた多くの成長戦略は政府によって特定の産業や地区を指定してお金を中心とした資源を投入し(ターゲティングポリシーと云う)、その産業や地区を短期的に発展させ、それを梃子に経済を成長させる事である。 しかしながら、生き馬の目を抜く…

【書評】「起業家」(幻冬社刊、藤田晋著)

サイバーエージェントの代表取締役社長である藤田晋氏の著者。創業期から現在迄のサイバー社の歴史と著者の苦悩の回顧録とも云うべき内容。 親友である事を公言して憚らないホリエモンこと堀江貴文氏とは、サイバー社黎明期においては受発注の関係であったと…

【書評】「大阪府警暴力団担当刑事 「祝井十吾」の事件簿」(講談社刊、森功著)

暴力団、芸能界、財界の切っても切れない相互扶助の関係を詳らかに晒す。 同和と財界の癒着(「同和と銀行 三菱UFJ“汚れ役”の黒い回顧録」、講談社刊)、イトマン事件の暗部(「許永中 日本の闇を背負い続けた男」、講談社刊)など、元来、アンダーグラウン…

【書評】「孤独のグルメ 新装版」(扶桑社刊、久住昌之・原作&谷口ジロー・作画)

kindleランキングでタイトルに惹かれて思わずクリックしてしまった一冊。 雑貨商を営む食いしん坊の主人公の食べ歩き。恐らくはアシスタントも居ない彼はクライアント廻りも食事もいつも独り。営業先の様々な土地での昼食や夜食が孤独な彼の人生に彩りと癒し…

【書評】「リフレはヤバい」(小幡績著、ディスカヴァー携書刊)

2012年師走の総選挙戦が幕を切ってから、安倍総理(当時自民党総裁)はデフレ脱却を唱え、そして日銀の金融政策を痛烈に非難し、早期の金融緩和を求めました。また、第3極の足並みが揃わない選挙戦とも相まって自民党・民主党政権が誕生しました。 デフレ脱…

【書評】「日本カジノ戦略」(新潮社刊、中條辰哉著)

嘆かわし事ですが、カジノ関連書籍が如何に少ない事か。わが日本は地方自治体を中心に誘致構想こそあれど、法案成立に至っていない。その事と無関係では無いだろう。 本書は2007年刊行と云う事もあり昨今のマカオの隆盛は織り込まれていない。ネバダ州立大学…

【書評】『なぜ大企業が突然つぶれるのか 生き残るための「複雑系思考法」』(PHPビジネス新書刊、夏野剛著)

2000年代前半の検索革命によって個人の情報収集能力は飛躍的に向上しました。 それ以前の経営層、マネジメント層への情報集中化から凡ゆるレイヤーも同等、或いはそれ以上の情報へのアクセスが可能になりました。 また、終身雇用、新卒一括採用による人材の…

【書評】「ドキュメント副知事 猪瀬直樹の首都改造•1800日」(講談社刊、西条泰著)

石原慎太郎東京都知事が辞職されました。2012年12月16日が都知事選挙となります。石原さんは辞職にあたって、後継者として指名されたのは本書の主人公猪瀬直樹副知事です。そして、本書はその猪瀬副知事の1800日にも及ぶ都政への取り組みを纏めたドキュメン…

【書評】「外資系金融の終わり 年収5000万円トレーダーの悩ましき日々」(ダイヤモンド社刊、藤沢数希著)

アメリカンドリーム。低所得者にもマイホームが持てるサブプライムローンという名の誘惑と、金融工学の粋の結晶である高格付けサブプライムローン証券のスクランブルにより引き起こされたリーマンショックを契機とした金融危機と同時に、大きすぎて潰せない…

【書評】「橋下劇場」(中央公論新社刊、読売新聞大阪本社社会部著)

折しも、自民党、民主党総裁選真っ盛りの平成24年9月。年内総選挙の様相を呈しており両党とも来るべきその時に備えた選挙の顔選びでもある。敗戦濃厚の民主党は現総裁でもある野田佳彦氏が優勢、自民党は爺殺しの異名をとる石原伸晃氏、安倍晋三氏、石破…

【書評】「財務省」(新潮社刊、榊原英資著)

ミスター円と呼ばれた元財務官僚の著者が野田佳彦内閣、民主党に突き付ける痛烈なアンチテーゼが本著のモチベーションとなったと推察する事は難くない。 総理を始め、外務大臣、政調会長など内閣、党の要職は松下政経塾出身者が占めています。選挙戦術には長…

【書評】「社長は労働法をこう使え!」(ダイヤモンド社刊、向井蘭著)

中小企業経営における社長の役割は中長期的に安定的な利益を創出する事とその会社を継続させる事、そしてその事業を通して社会貢献を果たすという事です。そして、その使命を遂行する過程においてなくてはならないもの、それは言うまでもなく労働力です。し…

【書評】「閉じこもるインターネット グーグル・パーソナライズ・民主主義」(早川書房刊 イーライ・パリサー著、井口耕二訳)

もはや検索と云う行為は朝歯を磨いたり、食事をしたりといった事と同様、ルーティンとなっている。もはやグーグルをはじめとした検索エンジンは社会インフラと言っても言い過ぎではないでしょう。 インターネット黎明期に於いて其れは知の海と称される程に、…

【書評】『儲けにつながる「会計の公式」』(日経ビジネス人文庫刊、岩谷誠治著)

春の嵐が吹き荒れ、漸く桜も開花し本格的な春が到来しました。それは、新年度が始まったと云う事でもあります(前年度の会社業績を振り返る間もなく)。そして、筆者も財務諸表に僅かばかりではありますが影響を与える会社員(営業職)です。 本書は経理財務…

【書評】「マネー・ボール」(武田ランダムハウスジャパン刊、マイケル・ルイス著)

映画公開もあり既読の方が多いと思われます。 メジャーリーグ球団といえば、ポストシーズンやワールドシリーズに進む為の選手獲得においてはお金に糸目を付けない。またはその様な球団こそがメジャーリーグ球団のオーナー足りえるイメージを持っているのは日…

【書評】「一生食べられる働き方」(PHP新書刊、村上憲郎著)

食う為に働き、そして世界をイメージする。此れが著者の働き方。 著者は元グーグル米国本社副社長兼日本法人社長の最新刊。 京都大学の学生時代には世界革命を目指し左翼活動家でもあったようだが、華麗なる職務経歴を積み重ねる中でも、常に「転向」してし…

【書評】「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論社刊、大村大次郎著)

元国税調査官の著作。 本書は脱税の指南書では無い。手順を踏み、「社会通念上」(分かりやすく云えば常識的に見て)という概念を踏み外してなければ大凡の領収書は経費処理出来ると云うもの。 税務の専門家や職業経理マンの同種の手引書は数多いが用語等が…

【書評】「12歳でもわかる!決算書の読み方」(フォレスト出版刊、岩谷誠治著)

減価償却費、貸倒引当金等々、財務諸表を読み解く際に難解な用語に辟易し挫折してしまう人が多くいるように思われます。 本書は私も含めて民間企業に勤務している方が取引先や自身の会社の財務状況をざっくり俯瞰するには決算書のどの部分にフォーカスすれば…

【書評】「モチベーション3.0」(講談社刊、ダニエル・ピンク著、大前研一訳)

固定概念を根底から覆す彗眼の書である。 人は生まれながらにして自律性を持っている。近年、欧米を中心とした先進国に蔓延る成果主義に一石を投じる事は間違いない。 旧来の報酬、昇級などの外的動機付けによるモチベーション2.0と自律性に基づく熟練、目的…

【書評】「IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ」(PHPビジネス新書刊、冨山和彦/経営共創基盤著)

産業再生機構COOを経て、経営共創基盤代表の冨山和彦氏の最新刊である。経営分析本と云えば大学教授等の学者による損益計算書、貸借対照表、そしてキャッシュフロー計算書など財務諸表の読み方、その関連性を解説するだけのものが多いのだが、本書はカネボウ…

【書評】「10年後に食える仕事 食えない仕事」(東洋経済新報社刊、渡邉正裕著)

独立系のニュースサイトMyNewsJapanを主宰し、日本人の働き方から日本経済、グローバル経済に鋭い洞察力で発信し続けている著者の最新刊である。 ここ数年、沈み行く日本経済の中で如何に生き残っていくか、どういったスキルが必要なのか、また、働き方の動…

【書評】『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書刊、藤沢数希著)

欧米の研究機関で物理学博士号を修得し、帰国後は外資系金融機関に勤務する著者の第三作目となる本書。 3.11の東日本大震災以降数々のメディアにおいて反原発を論じる評論家、著名人の論説に異を唱える渾身の意欲作といえるだろう。 著者自身のブログ(金融…

【書評】「フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。」(日本実業出版社刊、きたみりゅうじ著)

著書名の通りフリーランスの著者と税理士の掛け合いで展開される誰でも解る税金本。 経済関係書籍とりわけ税金に関する書籍は入門書と謳われるものでさえ難解な用語の連続で読み終える事が困難です。 しかし、本作は各所で絶賛されている通りの入門書ベスト…