窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「孤独のグルメ 新装版」(扶桑社刊、久住昌之・原作&谷口ジロー・作画)

 kindleランキングでタイトルに惹かれて思わずクリックしてしまった一冊。

 雑貨商を営む食いしん坊の主人公の食べ歩き。恐らくはアシスタントも居ない彼はクライアント廻りも食事もいつも独り。営業先の様々な土地での昼食や夜食が孤独な彼の人生に彩りと癒しを与えてくれる存在だ。下戸の彼には高級なレストランや行列の出来る様なお店には興味は無く、日々変わる舌の好みに合い、且つ空腹を満たしてくれるお店が好みだ。

 ストーリー性を求めては無粋で、そこに特段留意すべきものは無いが、何と言っても魅力的なのがシズル感たっぷりの料理の描写である。一品一品の料理の細部描写は勿論、その注釈にも手抜きは無い。しかも、出来立て故のふわっとした湯気をも感じさせる精緻さ。

 全話殆どのストーリーを思い出す事が出来ないのが本心だが、魅力的な料理の数々は不思議と思い出される。しかし、きっと読み直してしまうだろう。そんな本書だと思う。

 友人を“泣けてくる”と云わしめた「深夜食堂」も読みたくなった。

                                 kindleにて読了