窓際の景色

書評、釣行記。

【書評】「溶ける 大王製紙前会長井川意高の懺悔録」(井川意高著、双葉社刊)

 製紙業界第3位のトップに君臨していた創業家3代目、カジノという魔物にのめり込み毎週末マカオに通ってギャンブルに身もカネも溶かしてしまった。挙げ句、連結子会社から多額の貸付を受けギャンブル資金とするも、総額106億8000万円もの大金を失ってしまう。そして、刑事事件として東京地検特捜部により立件、懲役4年の実刑判決を受け現在服役中。上場企業トップが刑事被告人として立件されることは然程珍しくはない。

 東大法学部現役合格を果たし、卒業後はスパルタな父の元、子会社の立て直しに全力で取り組み類い稀なる経営手腕を発揮する。そんな有能な彼が如何にカジノという魔物にのめり込んでいったか。非常に興味深い記述の連続である。また、超一級のギャンブル読み物でもある。

 2020年東京オリンピック開催も決定し、アベノミクス成長戦略の後押しもあり、IR(統合型リゾート)誘致も現実味を帯びてきている。沈み行く税収を賄うべく年間数千億もの経済効果を期待できるIR誘致は待望されてしかるべきだが、ギャンブル依存症への対策は避けては通れないだろう。IR先進国ではギャンブル依存症は立派な病気と認識されており、誘致に於いては関連アセスメントとともに依存症対策に全力を傾けているのが現実である。日本に於いても国はもとより、カジノ議連、ベンダー含めて残された時間は多くない。